予防歯科
予防歯科について
当院の予防歯科の特徴
当院では予防歯科にも積極的に力を注いでおります。元来、歯科医院は治療する場として考えられてきましたが、切削介入による治療はどんなに高水準の治療だとしても歯の寿命を落としてしまう行為に他なりません。
天然歯と詰め物などの人工物からできる隙間にできる菌の繁殖はどうしても避けられないからです。
そもそも虫歯にさせない、もしくは治療した歯の再発をさせないためにはどうしたら良いのでしょうか?それはまず定期検診に通っていただくことが大きいと思います。
コンスタントに歯科医院に通院していれば、無症状の病変なども早期の段階で発見・対応できる可能性が飛躍的に上がります。
定期検診の重要性
「プレジデント」という雑誌で、55歳~77歳の男女1000人にアンケートを行い、健康に関わる後悔トップ20を掲載していました。
55歳〜77歳が選んだ「健康の後悔」第1位は?
- 7位 たばこをやめれば良かった。
- 6位 頭皮の手入れをすれば良かった。
- 5位 間食を控えれば良かった。
- 4位 腹八分目を守り、暴飲暴食をしなければ良かった。
- 3位 日頃からよく歩けば良かった。
- 2位 スポーツなどで体を鍛えれば良かった。
- 1位 歯の定期健診を受ければ良かった。
なんと一位が「歯の定期健診を受ければ良かった。」と後悔されてる人が多い結果となりました。
ではこれは一体何故でしょうか?このページをご覧になっていただけた皆様にも、ぜひ一度考えてみてください。
答えは、、、、
ズバリ「定期検診を怠った結果、歯を失ってしまったから」です。
マウスピース矯正を提供するアライン・テクノロジー株式会社が行った 、60代以上の男女400名に対して実施したアンケートを見てみると、
Q自分自身の体について「変化して欲しくなかったこと」「失って後悔していること」は?
- 1位 歯 61.3%
- 2位 髪の毛 60.0%
- 3位 体型 43.3%
という調査結果となったようです。理由としては、このようなお声が多かったとのことです。
- 手入れ不足で総入れ歯になってしまった。
- 固いものが食べにくくなった。
- 食べ物が美味しくなくなった。
- 滑舌が悪くなった。
- 化粧より歯が大事だった。
歯を失うと、多くの方は入れ歯で補っていると思いますが、入れ歯では満足に噛むこともできず、食べ物の種類も選ばないといけない、また入れ歯は歯茎も覆うので味を感じ取りにくいなど、「歯を失って、食事が楽しくなくなった。」という大きなストレスを感じてしまってることが想像できると思います。
他にも歯を失うと、以下のようなデメリットがあります。
歯を失うことで起こるデメリット
- 歯のかみ合わせが悪くなり、歯が傾いたり、伸びたりする。
- 歯並びに大きな影響が生じ、顔の輪郭が変わることがある。
- 消化器官に負担がかかる。
- 発音や話がし辛く、歯を見せて笑えない。
大人のための定期検診
(メインテナンス)の内容
歯石はどれくらいおきに歯科医院にとりに行ったらいいのでしょうか?とのご質問を多く頂きます。
日本歯周病学会の解答では、通常は1年に3回~4回が良いとは言われています。
※日本歯周病学会の回答
もちろん、患者さん毎のお口の状態やリスク、ご本人のご希望などによって内容やタイミングは変わります。
当院では治療完了、1〜6ヶ月ごとを目安に定期的なメインテナンス(定期検診)でのご来院をおすすめしています。
メインテナンスの内容
口腔内の状態の把握
- 問診、視診
前回から変わりがないか、虫歯の有無の確認、詰め物・被せ物の状態確認、経過観察中の初期虫歯の状態確認。 - レントゲン
虫歯の有無の確認、歯周病の状態確認、その他異常の有無の確認。(1〜2年に1回程度) - 口腔内写真
数ヶ月おきに撮影して情報の共有、経過観察。
歯周病(歯ぐき)へのアプローチ
- 歯周病の検査
歯周ポケットの深さ、歯の揺れ具合などの確認。 - クリーニング
検査結果に応じてクリーニング。 - 口腔内写真
数ヶ月おきに撮影して情報の共有、経過観察
※前回と期間が開き過ぎてる場合は歯石が再付着してる場合が多く、定期検診前のような治療が再度必要になる事が多いです。
定期検診に入るまでの歯周病治療の流れはこちらをご確認ください。
虫歯(リスク)などへのアプローチ
- CRASP
虫歯リスクの確認(1〜2年に1回以上)。 - ブラッシング指導
染め出しを用いた磨き残しの状況確認(1年に1回)歯ブラシ、フロス、歯間ブラシなどの清掃用具(ケアグッズ)を正しく使えているか使い方の確認。 - かみ合わせチェック
歯ぎしりや噛みしめ癖のチェック。 - 状態確認
入れ歯や当院で埋入したインプラントの状態確認。
定期検診に行かなくなるのはなぜ?
- 面倒、時間がない
- 「問題がない」という思い込み
- 費用への不安
- 過去のトラウマ
- 恥ずかしさ
- 定期検診の効果を実感できない
上のような理由が考えられます。心理的な要素まで関わってるため、これらを全て解決するには非常に難しいものがあります。しかし、疾患は待ってはくれません
年齢とともに歯は失われていく
歯が残っている平均本数について厚生労働省が令和4年に調査した結果をみてみると(令和4年厚生労働省 歯科疾患実態調査結果)年々改善傾向にありますが、85歳以上では残っている歯の本数が14.5本、親知らずを除くと全部の歯の本数の28本のうちおよそ半分の歯を失っている状態です。
そして50代以降から急激に喪失する歯の本数が増えてくる事がわかりました。加齢による免疫力の低下などが挙げられますが、何より「若い頃は気をつかわなくても問題なかったから今後も大丈夫だろう」というご自身の経験則が、実際の健康状態の把握を邪魔してしまっているのです。
これは歯科に限った話ではなく、全身的な健康においても同じような事象が発生しやすいです。
本当に定期検診って効果あるの?
何回かの歯周病検査を元に立てた治療計画に沿ったクリーニングで、綺麗になった口腔内。
歯石もほとんどなく、治療としては終わったというイメージをつい持ってしまいます。
勿論これで一生大丈夫なわけはありません。
ご自身の口腔内ケア(セルフケア)が100点でない以上、磨き残したプラークはすぐさま歯石(菌の巣)になり、歯ブラシでも取れなくなってしまいます。
その溜まり始めた歯石などを、タイミングをみて、歯科衛生士や歯科医師が再度除去する必要がどうしても出てきます。
また虫歯の再発予防のためにも歯磨きのレベルのチェックや、早期発見早期治療に努めれるために確認をしっかりする必要があります。※長崎大学 新庄教授の研究・歯科疾患実態調査より
痛い時だけ歯医者に行く対象者層は、80歳までに多くの歯を失う結果が出てきています。
一方、定期的に検診を受けていた対象者層は80歳になられても25本前後をキープしてるという結果が出ました。
歯周病や虫歯は症状としては出にくい疾患の一つですので、何かが起きてから通うのではなく、その前に定期的な検診を癖付けることこそ、歯をなるべく残すコツだと思います。
そもそもとして毎日ご自身で100点を取れる歯磨きは事実上不可能と言えると思いますので、点数が取れなかった部分は、我々歯科医師や歯科衛生士に任せていただけますと幸いです。(プロフェッショナルケア)
万が一歯を失ってしまったら
例えしっかり定期検診を通っていても、その人の遺伝的な要因や加齢的要因、または外傷などによって歯を失ってしまうことはどうしてもあると思います。
一歯もしくは二歯ほどの欠損であれば条件によってはブリッジが可能です。しかし多数歯欠損となるとインプラントか入れ歯しかありません。
インプラントはとても良い治療ですが、値段も高く怖いイメージからか敬遠する方は多く、入れ歯を選択する方が多いと思いますが、昨今のニュースでもご覧になったことがあるかもしれない、歯科技工士不足の問題が関わってきます。
特に入れ歯を製作することができる技術者が不足しており、将来は保険点数が今よりもかなり高くなる、もしくは保険制度では賄えないため自費のみとなる。
最悪の場合それでも制作できないという未来が予想されます。現在3Dスキャナーやプリンターの開発も著しいため、悲観しすぎることはないですが、歯は失わないに越したことがないと考えるのが自然の流れだと思います。
長期的に見た金銭面の違い
メインテナンスは一回2500〜5000円ほどです。(現在の保険制度の換算より)年に4〜5回行ったとしても一本のインプラント44万円ほどとしたら、22年間分ほど。
経済的にも定期検診の方がずっとお得なことがわかると思います。
| メインテナンス | 2,500〜5,000円/1回 年4〜5回通った場合:約10,000〜25,000円/年 |
|---|---|
| インプラント1本 | 約44万円 |
虫歯予防のために大切なこと

虫歯の予防についても日々のケアが大事になってきます。次のような要素が大事になってきます。ここはかなり個々によって指導に違いが出るので詳しくは医院にて話させていただけましたら幸いです。
- 1日に行う回数
- タイミング
- 磨き方
- ケアグッズ
ちなみにニュースでよくやっていた、「ご飯を食べたら30分は待ってから歯磨きしましょう」の真偽性ですが、日本小児歯科学会の声明を見てみましょう。(https://www.jspd.or.jp/recommendation/article09/)
結論から言うと、食後すぐに磨いた方がよさそうですね。情報というものが多く増えてしまった現代。惑わされず、なにが正しさに近しいのか。そこを意識する必要もあります。
また食生活で甘いものは控えるということも聞いたことがあると思いますが、シュガーコントロールという概念があります。
シュガーコントロールとは
シュガーコントロールとは、砂糖の摂取量や頻度、時間を管理し、むし歯予防や健康維持につなげることです。むし歯の原因菌(ミュータンス菌)は砂糖を餌とするため、摂取をある程度適切に管理することで菌の活動を抑え、歯を溶かす(脱灰)リスクを減らします。
これは「甘いものを一切食べない」ということではなく、食べるものや食べ方、時間帯を工夫することを重要視する概念です。
- 摂取量を意識する
ケーキやコーラなど意外なものにも多くの砂糖が含まれています。摂取量に注意し、1日の摂取カロリーの5〜10%(一般成人で角砂糖約6〜12個分)程度に抑えることが推奨されています。 - 食べる時間を工夫する
だらだらと食べ続けると、口の中が酸性になりやすく、むし歯のリスクが高まります。 - 就寝前の飲食を避ける
睡眠中は唾液の分泌が減るため、就寝前の砂糖の摂取は特に危険です。おやつの時間と回数を決める: おやつの時間を決めて、短時間で食べ終えるようにします。 - 水分補給をこまめにする
飲み物で糖分を摂りすぎないよう、水やお茶を飲むようにしましょう。スポーツドリンクにも注意が必要です。 - 食事以外の飲み物(無糖)や、歯に優しいおやつを選ぶ
キシリトール入りのお菓子や、ヨーグルト、果物、チーズ、ナッツなどを選ぶのも良い方法です。
CRASPという考え
CRASPによる虫歯リスクの診断また、これまでの検査結果と、問診で分かる食生活や生活習慣に関する情報を合わせることで、今の時点でどれだけ虫歯のリスクを抱えているかが分かります。
当院では日本ヘルスケア歯科学会によって作成されたCRASP(Caries Risk Assessment Share with Patients)を用いることで、虫歯になりやすいかなりにくいか分かるだけでなく、ご本人が今後どのように取り組めば虫歯になりにくくできるか分かるよう、ご説明していきます。
※これからのカリエスリスク・マネジメント『CRASP』とは… - 日本ヘルスケア歯科学会
最後に
いかがでしたでしょうか?こういったものをご自身だけで解決するにはかなりの労力が必要となります。予防というのは、ご自身の力と知識も大事ですが、我々歯科医師や歯科衛生士等プロの指導・管理を持ってして初めて到達できるものです。
正直決して簡単な事ではありません。痛くもないのに毎回あまり好きではない歯医者に通わないといけないのですから。
ですが、後から起きてしまうもっと怖い症状や治療を防げるかもしれない。それは何より、色々統計を取ったデータが示してくれてます。
クリーニングはリフレッシュ要素もありますので、お気軽に通院していただきましたら幸いです。
ご本人様や、そのご家族、地域の健康づくりのためにもぜひ一緒に頑張って、お口や体の健康を維持・増進していきましょう。

